『グレイテスト・ショーマン』の感想を
インターネットで調べてみると、
当然のことながら、賛否両論あります。
その賛否両論が、
映画を観る前の人にとっては、
観るべきかどうかの判断材料となり、
映画を観た人たちにとっては、
自分との観方の違いや、新しい発見となります。
まだ映画を観ていない人たちに向けて、
最初に申し上げておくと、
『グレイテスト・ショーマン』には、
忙しい中時間を作り、
1800円を支払って観るだけの価値があると、
個人的には思っています。
なぜ、そう思うのか。
以下、
『グレイテスト・ショーマン』を映画館で観るべき理由を
「3つの視点」から書いていきます。
もう観た人も、
私の意見を読んでみて、
自分の見方との違いを楽しんでもらえたらと思います。
何をもって「ネタバレ」というのか、
その定義にもよりますが、
基本的にはネタバレなしで書いていきます。
ただ、
一切の前情報を入れずに映画を観たいという人(私です)は、
以下の文は、映画を観てから読んでください。
スポンサードリンク
スポンサードリンク
視点①:音楽と映像について
ところで、
私はミュージカル映画が苦手です。
男女が静かに佇んでいるようなシリアスなシーンで、
突然男が歌い出す、
これがもし現実だったら引くじゃないですか。
歌だけでも引くのに、
さらに踊り出すなんて、
現実のシチュエーションではちょっとあり得ないですよね。
「フラッシュモブ」なんてものが流行りましたけど、
あれは
「そーゆーもん」
っていう共通認識があるから、
「あー、フラッシュモブね」
となりますが、
もしフラッシュモブというものを全く知らなかったら、
やっぱり引くと思います。
では、
現実ではありもしないのに、
なぜミュージカルというものは、
歌ったり踊ったりするのでしょうか。
ミュージカル映画が苦手な私は、
この点が全然理解できませんでした。
そんな私が考えた、
ミュージカル映画の“理屈”は、
「あれは実際には行われていない内面の表現」
なのだという解釈です。
私はミュージカル映画を、
登場人物たちのそのときの内面の様子を、
歌や踊りで表現するという、表現の手法だと考えています。
男女が静かに佇むシーンで、
突然男が歌い出す、
そういうことが実際に行われているのではなくて、
「このとき、男はこういう心情だった」
という内面を、
ト書きのように文字で表す代わりに、
歌と踊りで表しているのだ、
ということです。
この手法は、
セリフや演技だけで感情を表現するよりも、
より劇的に激的に感情を観客に伝えることができます。
私は、
ミュージカル映画は苦手ですが、
「このように解釈できるミュージカル映画」は、
違和感なく楽しく観ることができるのです。
(ややこしい性格ですいません)
『グレイテスト・ショーマン』の歌や踊りは、
そういう意味で、物凄く完成度が高いものでした。
歌と踊り、
そしてそのシーンを切り取るカメラワークや演出、
画面を構成する全て、そのシーンの全てが、
そのとき歌って、踊っている者たちの感情を表現していて、
観ている私を物語の中に飲み込み、
登場人物に感情移入させます。
この映画を最大限楽しむためには、
家のちっちゃいテレビ、ショボいスピーカーではダメで、
映画館で、
なるべく画面が大きくて、
なるべく音響設備がいい映画館で観るべきです。
この条件で観たときに、
この映画の良さが最大限引き出されます。
『グレイテスト・ショーマン』は、
映画館で楽しむために作られた映画と言っていいでしょう。
スポンサードリンク
視点②:フリークスについて
視点①で、
映像と音楽で世界観に引きずり込んでいく、圧倒していく、
ということを書きました。
このような、
観客を圧倒するミュージカル映画にすることによって、
この映画が扱うデリケートな題材について、
観客の理解を促す効果があったように思います。
デリケートな題材というのは、「フリークス」です。
「フリーク」とは、
辞書的な意味で言えば、
「普通とは違う形のもの」
となります。
フリークスはフリークの複数形ですから、
フリークの集団ということです。
ヒュー・ジャックマン演じる主人公P・Tバーナムが
作ったサーカス団は、ただのサーカス団ではなく、
普通とは違う形の人々、つまり異形の人々、
フリークを集めたものでした。
映画の中で、
バーナムが最初のフリークを誘うシーンで、
私は
「おいおい大丈夫かこの主人公」
と思いました。
物凄くデリケートな部分に、
土足で踏み込んでいくようなシーンだったからです。
それでも最後には、
「フリークス最高!」
という感想になったのは、
間違いなくミュージカルシーンの迫力が理由です。
映画のポジティブな世界観に飲み込まれたのです。
また、
『グレイテスト・ショーマン』のシナリオは、
なんのヒネリもない、ベタベタのストーリーです。
「こんな先が読めるような脚本じゃ楽しめない!」
という意見もあると思いますが、
このデリケートな題材で、
こんなにもポジティブな印象の
エンターテインメント作品に仕上げられたのは、
シンプルでわかりやすいストーリーあってこそだと思います。
「ただ単にキレイにまとめただけじゃないか」
と思う気持ちもわかりますが、
「フリークス」についてしっかり描こうとすればするほど、
どうしてもシリアスな内容になってしまいますから、
『グレイテスト・ショーマン』をエンターテインメント作品として、
ポジティブなメッセージを伝える作品としてまとめたい、
というコンセプトでいくならば、
この脚本で正解だったのではないでしょうか。
それでは、
『グレイテスト・ショーマン』という映画は、
「フリークス」を使って、
どんなメッセージを届けたかったのでしょうか。
別記事の
『グレイテスト・ショーマン』のフリークスのうち、実在したのは誰?
でも書いているように、
この映画に出てくるフリークスは、
ほとんどが実在した人物がモデルになっています。
彼らは、
「フリークス」=「普通とは違う形のもの」
と呼ばれた人たちです。
多くの人と見た目が違う、
ということだけで物凄く苦労したはずです。
それでも彼らは、
「This is Me」という強い気持ちを持って、
堂々と生きました。
「人と違う」
ということは、辛い経験を呼び込みます。
これは、
目に見える形で他の人たちと違っていたフリークスほどではないにしろ、
私たちにも大なり小なり経験があることです。
私たちは、
他の誰とも違います。
時にはその違いが際立って、
集団から浮いてしまうこともあります。
それでも、
自分を否定しなくていい。
「This is Me」と叫びながら、
堂々と生きていく、
バーナムに率いられたフリークスの生き様は、
そういう勇気を与えてくれます。
ベタですが、
やはりこの映画から最も学ぶべきことは、
この点だと思います。
視点③:男の幸せと女の幸せについて
視点②では、
ベタベタな感想を書いてしまったので、
視点③は、
少し変わった視点で書いていきたいと思います。
「君に約束した生活は、こんなのじゃない」
というセリフは、
割と序盤で主人公P・Tバーナムが、
その奥様に言うセリフです。
その後、
バーナムはビジネスを成功させていきますが、
奥様の幸福度は、さほど上がったように見えません。
ジェニー・リンドの公演をプロデュースし始めた頃には、
バーナムの社会的な成功度合いが上昇したのに対して、
奥様の幸福度は明らかに下がっています。
よくよくシーンを思い返してみると、
奥様が楽しそうにしているのは、
バーナムと、家族と一緒に過ごす時間でした。
奥様にとっては、
それが最も大事なことだったのです。
一方バーナムは、
冒頭に紹介したセリフにも表れている通り、
社会的に成功しないと、
奥様を幸福にすることはできないと考えているようでした。
私は男なので、
バーナムの気持ちがよくわかりました。
そして、
こう思いました。
「女って、男の成功を割とどーでもいーと思ってるよな」
もちろん、
当てはまらない場合もあると思いますが、
少なくともこの映画の中ではそうでしたし、
現実の世界を見ても、
当てはまるケースは多いように感じます。
女性は愛した男が愛し続けてくれればそれでよく、
お金があるかどうかと幸福度とは関連が薄い、
対して、
男性は女性を愛していればこそ、
もっと稼いでいい生活をさせてあげることが、
女を幸せにするということだ、
と思っているふしがあります。
この、
男女の幸福観の違いの悲しいところは、
男も女もどちらも同じように
相手のことを愛しているという点です。
ただ、
「幸福」に必要だと考えているものが違うだけなのです。
このことを理解せずに突っ走ると、
バーナムのように「家族」が壊れてしまいます。
男性は、
女性が何を求めているのかを、
時には振り返って、感じ取る必要があるのだ、
と思いました。
『グレイテスト・ショーマン』は、
「どん底にいた男のサクセスストーリー」
と言われがちですが、
「愛し合ったふたりの男女の、幸せを探求する物語」
とも捉えることができるのです。
◆主人公P・T・バーナムについてまとめた、
P・T・バーナムとは?「グレイテスト・ショーマン」を史実と比較!
◆映画に登場するフリークスについてまとめた、
『グレイテスト・ショーマン』のフリークスのうち、実在したのは誰?
◆映画で使われた名言について書いた、
『グレイテスト・ショーマン』ラストに表示されるP・Tバーナムの名言
◆「バーナム効果」についてまとめた、
バーナム効果とは?『グレイテスト・ショーマン』のバーナムが由来?
も是非読んでみてください!
スポンサードリンク
スポンサードリンク