教養

『羅生門』の意味とは?どんなメッセージが込められているの?

投稿日:2018-01-04 更新日:

芥川龍之介が書いた『羅生門』は、多くの人が中学校の国語の授業で読んでいると思う。
老婆が死人の髪の毛からカツラを作る。。。
中学校の頃、授業で読んだときには、この話の面白さが全く理解できなかったし、なんの意味があるのかもわからなかった。

そんな名作『羅生門』を、大人になった今読んだら、意味を理解できるのだろうか?
そんな素朴な疑問から、実際に読んでみるとなかなか考えさせられた。

芥川龍之介

芥川龍之介

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人にやられてイヤなことはお前もするな

「人にやられてイヤなことはお前もするな」
っていうのは、逆に言うと、
「お前がやってることは人にやられても文句は言えねーぞ」
ってことだと思う。

遅刻するヤツは遅刻されても文句は言えないし、浮気するヤツは浮気されても仕方ない。
うん、なんとなくこれは多くの人が共通認識として持っているような気がする。

僕は割と遅刻をしてしまうタイプだけれど、その代わり相手が遅刻してきても怒らない。
「いつもは俺が待たせてるから全然いいよー」
という感じ。
でも、
「お前遅刻するなんてクソヤロウだな!」
ともし僕が言ったとしたら、きっと相手は
「お前にだけは言われたくない!」
と思うだろう。

お前には言われたくない!

お前には言われたくない!

いつも自分がやってしまっていることを、自分がされた場合、それに対して文句を言うことはできない。
「目には目を歯には歯を」
ハムラビ法典的な感覚。
ここまではいいとしましょう。

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『半沢直樹』の場合

池井戸潤の原作で、ドラマ化されて物凄く流行ったドラマ『半沢直樹』。
このドラマは「目には目を歯には歯を」を積極的に行っていくドラマだ。
「やられたらやり返す。倍返しだ」
このセリフからいくと、やられた後やり返し過ぎているため、「目には目を歯には歯を」というよりも、「目には目と歯を」と言った方が正しいか。

では、自分がやられたことを積極的にやり返していくスタイルっていうのは、倫理的にオッケーなのか。

自分が遅刻されたら、こっちは次回わざと遅れていく。
自分が浮気されたら、こっちも積極的に浮気する。

さらには、積極的にやり返しにいって、しかも「倍返し」するというのはどうなのか。

自分が30分遅刻されたら、次回自分は1時間遅刻していく。
自分が浮気されたら、自分は浮気相手を2人作る。
(もしくは、新しい本命を作って、元の本命を浮気相手にしてしまう)

羅生門の場合

さて、『羅生門』はどうだろうか。

『羅生門』は下人が「生きるためだったら弱者から奪ってもいい」という思想の婆さんから、同じ思想を元に奪う。
別に下人は婆さんにイヤなことをされたわけではない。
つまり『羅生門』は、お前がやったことをお前がされても文句は言えないぞ、という発想。

AくんはBさんとの約束に遅刻しました。
Aくんは遅刻するような人間なので、CくんはAくんとの約束に遅れていき、「お前だって遅刻するんだから文句は言うなよ」と言いました。

AくんはBさんという彼女がいながら、Cさんと浮気をしました。
その後AくんはBさんと別れて、Cさんと付き合いました。
そしてCさんはDくんと浮気をしました。
浮気をしていることをAくんにバレたCさんは、「Aくん、あなただって浮気したことあるでしょう?だから私の浮気を怒る権利なんてないハズよ」と言いました。

怒る権利はあるか

怒る権利はあるか

『半沢直樹』も『羅生門』も、Aさんの悪事に対するBさんの行為の内容は全く違う。
「目には歯を、歯には目を」が許容されているこの点も、考えるに値する部分だと思う。

似たような話

似たような話を思い出した。
たとえば僕が万引き常習犯だったとする。
その後、僕が万引き常習犯だと知っているA君が万引きをしたとする。
僕はA君に注意する。
「万引きは犯罪だからやめろ」
このとき、「お前には言われたくない」と思うA君の気持ちは正しいか?
万引きをしている僕には、他人の万引きを注意する権利はないのか?

万引きは犯罪です

万引きは犯罪です

「万引き」とか「浮気」とか「遅刻」とか、イヤなワードを沢山出してしまった。
しかし、これが僕が今『羅生門』を読んで考えたことである。
たぶん正解はない。
人それぞれ自分の思想の下生きている。

僕の意見としては『半沢直樹』も『羅生門』もやり過ぎかな、と思う。
確かに一時的にはスッキリするかもしれないし、利を得られるかもしれないが、きっと後味は悪い。

不倫していたことが明るみに出て干された芸能人に対する自分の気持ちとか、ニュースでみた犯罪者の実家に落書きや貼り紙をする行為とか、実際に自分に関係がない「悪」にも容易に触れられる時代になり、それについて何かを感じたり、考えたり、時には行動を起こしたり、そういったことができる情報社会である。
僕にとっての『羅生門』とは、「悪」を目の当たりにしたときの自分の感情や思考、行為について考え直す機会となる「名作」であった。

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